福岡県の北九州高等専門学校から、アメリカの名門ウィスコンシン大学へ留学した友岡優太さん(20)。
コンピューターサイエンスを学ぶ若きエンジニアは「高専生」を理由に留学の際、様々なハードルに直面しました。
海外へ活躍の場を広げる“日本の若い力”を阻むものがあってよいのか。
留学中の高専生に、グローバル視点での課題を聞きました。
夢への第一歩を「高専」から
幼い頃からコンピュータに興味があったという友岡さん。
中学時代に経験したカナダ留学で海外への憧れが芽生え「コンピュータサイエンスを武器に海外で活躍したい」という夢を抱くようになりました。
進学先を考える中で「高専であれば実践的なスキルを身につけながら夢に早く近づける」と考え、地元の北九州高専へ進学したといいます。
高専で着実に学びを深めていたところ、始まったコロナ禍。
この状況を「時間的に余裕ができた」とポジティブに捉えた友岡さんは、学業に加え海外の社会課題を解決する活動も開始。
ネット上でも日々海外の情報に触れ「分野を超えて広く学べる海外に留学したい思いが強くなった」と、高専3年の4月に海外大学の受験を決意しました。
「卒業証書」という思わぬ障壁
ところが、留学準備に取り掛かる友岡さんに思わぬ困難が降りかかります。
友岡さんが進学を検討していたアメリカ、カナダ、オーストラリアでは、大学進学に「高校卒業資格」が必須。
しかし、高専で3年間を過ごしても「高校卒業証書」がもらえないことが判明したのです。
日本の学校教育法では高専で3年以上学んだ場合、要件を満たせば「大学に入学することができる」としていますが、海外ではこの理屈は通用しません。
友岡さんによれば「大学に入る基準ではなく、日本の大学に入るための資格として記載されている」ので、海外の大学事務局が納得しないのだといいます。
そこで友岡さんは、高専での3年間の学びが出願資格に値すると各大学へ交渉。
柔軟に対応してくれたアメリカの州立大学へ進学しました。
オーストラリアの大学とは最後まで交渉が難航し、アメリカへの進学が決まったこともあり、交渉を途中で終えたといいます。
高専の学びは米国名門大学レベル
苦労して勝ち取った入学。
授業が始まると友岡さんは驚きました、「大半がすでに高専で習ったこと」だったからです。
なかでも理学系の授業は「9割が履修済み」と思えるほどで、コンピュータサイエンスの授業も、試験をパスすることで一部の履修が免除されました。
友岡さんのケースから、高専の学びがいかに専門的かが分かります。
日本の高度経済成長を背景に「職業に必要な能力を育成することを目的」に設立された高専。
こうした設立の経緯などから、高度な学びとは裏腹に高専を5年で卒業しても卒業時には「称号」が与えられるのみで「学位」は授与されません。
さらに、日本独自の教育機関であるため世界的な認知度がまだ低く、国際的な単位移行ができないケースも少なくありません。
例えば、タイやモンゴルなどは日本の高専制度を効率的な教育システムだとして「KOSEN」の名で導入しています。
しかし日本の高専との交換留学の際には、単位互換のためにわざわざ覚書を交わさないといけないなど、国際基準に即した認定の制度がないことが近年課題として浮き彫りになっています。
友岡さんは言います「称号は海外では伝わらない。正式な学位を得ていないのは単位認定時のマイナスの要素になり得る」。
友岡さんだけではありません。
高専を5年で卒業後、学位がないために海外でVISA取得に苦労する人は多くいるとされ、卒業後の国際的な活躍が阻まれ、高専OBに適切な評価がされていないのではないかとの声が根強くあります。
国際化で求められる「学位」という証明
高専生の友岡さんが留学時に直面した様々な壁。
それでも、友岡さんは「高専での学びが土台となった、今に生きている」と感謝し「ゆくゆくは帰国して日本のために貢献したい」といいます。
高専で学ぶ後輩たちには「高専での学びを土台に、高度な研究をするため海外に出てほしい」と願っており、そのためにも「学位の取得を促したり、単位の国際的な互換性を高めたりといったサポートが必要」と訴えます。
ネット環境の充実などからグローバル化が進む近年。海外で活躍する“日本の若い力”を支えるためにも、「学位の授与」といった高専の国際化が求められています。
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